久しぶりにメーカーさんで、デザインの出張講習をやってきた。開発の部署へ転属された従業員の方に向けて、PhotoshopとIllustratorの基礎的な内容を3時間。
デザイナーなら「両方で3時間?」「無謀!」なリアクションになると思う。今回は必要な機能を徹底的に絞り込んで、ツメツメの盛りだくさんでやってきた。
先方の目的は、取引先に配布する自社製品のチラシや、業務用製品の簡素なパッケージ、SNSの画像制作だ。とは言え、解像度や配置、写真の色補正、切り抜き、生成AIまでやったので実質3時間半とやや予定を超えた。
以前は自治体主催の企業向けセミナーをかなりやっていて、延べ100社以上の経験がある。今も希望があれば出張講習はやっているけれど、本業のデザインと大学の授業があるため積極的にはやっていない。今回は古くからのお付き合いのある会社だったので、快くお引き受けした。
以前、デザイナー仲間から「一般企業に教えると内製化が進み、デザイナーの仕事が減る」と言われたことがある。確かにその通り。企業がデザイン業務を内製化できれば、時間もコストも合理化できる反面、外注デザイナーの仕事が減る。
ただ、私が講習を断ったとしても、YouTubeなどでハウツー動画がいくらでもある。遅かれ早かれ企業の内製化は進んでいく。
特に生成AIが内製化を加速している。今回の企業もAIの利用には積極的。イメージ画像などは素材サイトで購入するより、生成した方がコストを抑えられる。企業としては利用したくなるのが普通だろう。
では、デザイナーの仕事は無くなっていくのか?
企業の担当者はこうも仰っていた。「パッケージができるデザイナーを紹介してほしい。製品の特長がひと目で伝わり、つい手に取ってしまう訴求力のあるデザインができる人を」と。
営業用のチラシやSNS画像の内製化はできるが、初めて見た人に製品の特長が伝わり、感度に訴えかける「戦略的なデザイン」は自分たちにはまだできない、という認識だ。このようなデザインはテンプレではできない。製品の特長や用途、それによって得られるメリットを訴え「なんとなくいい感じ」ではなく「なぜ、これが良いのか?」を言語化して設計できる力が必要となる。
「じゃあ、デザイナーもまだまだこれから!」かと言うと、別の問題もある。企業の個性にあったデザイナーと巡り合うのは簡単ではないのだ。
デザイナーは全方位、どんな方向性のデザインでもできれば良いのだが、一人ひとりが得意とする個性がある。そのため企業が求める個性と合わないことがある。その企業も過去に何人かに依頼したものの、方向性が合わなかったとのこと。企業のニーズと高い次元でマッチングするのは、なかなかにハードルが高いことなのだ。
つまり、簡単な作業でメシは食えなくなってきたというと。いわゆるスキルマーケットのような、手が届きやすい価格でデザインを請け負うサービスも、今後は厳しくなってくるだろう。
デザイナーが生き残る道は、より高度で説得力のあるデザインを追求する方向しかない。特に生成AIの精度が急速に上がってきた、ここ1〜2年はそう感じる。その世界に身を置き続けるなら、自分の価値を磨き続けるしかない。そう改めて感じた一日だった。
